
著者 海空りく イラスト さばみぞれ
あたしが、時雨になればいいんだ
猛毒が身を滅ぼしていく
"不"純愛ラブコメ、最終巻!
猛毒が身を滅ぼしていく
"不"純愛ラブコメ、最終巻!
あらすじ
「……博道くん。たすけて……」理不尽な大人の脅迫により演劇が出来ないほど傷ついた晴香は、心の拠り所に俺を求める。でも……俺はもう晴香を求めてはいなかった。俺の心にはもう時雨しか居ない。晴香の心が落ち着けば別れ話を切り出そう。迷いは無い。時雨の与えてくれた『猛毒』が俺の心の奥底まで染み込んでいたから。だが俺は心するべきだった。『猛毒』(あいじょう)とは身を滅ぼすが故に毒なのだと。毒々しく色づいた徒花が、堕ちる。"不"純愛ラブコメ、最終章――(GA文庫公式サイトより)
感想
前巻(3巻)のお話
前回の感想はこちらから
試し読みまでのお話
部長から目をかけてもらい、映画のプロデューサーから逢うことになった晴香。博道との予定を断り、食事会に行って高尾と再会してしまった晴香は、高尾に脅されて逃げた先で、時雨と博道が一緒にいるところを見てしまい――というのが試し読みまでのお話。
ここからは少しネタバレが含まれるので、読んでない方は注意してください。
純愛な不純愛
さて今回は嘘とておくれな猛毒な回でした!
食事会で高尾に脅され、逃げた先で時雨と博道くんが一緒にいるところを見てしまい倒れてしまった晴香。病院に運ばれて目覚めた晴香に博道くんは、時雨が妹になったことを言い出せず隠していたことをようやく謝ります。
「大丈夫だ。大丈夫。もうここにそいつは居ないから。……俺が、守るから」
(73ページ 引用)
“兄妹”だったことでホッとした晴香から高尾と会ったことを聞かされた2人。そんな博道くんたちは、高尾を受け入れるか、高尾と争うかなどを晴香の判断にゆだねることにするんですよね…。しかも、博道くんは晴香への好意がなくなっていることも隠して。
晴香を抱きしめることでさえ、負い目を感じるようになってしまった博道くん。前回、晴香が思っていた「たった、それだけ」。それがもうすでにそれだけではなくなり、博道への心にさえ届かないものになっている、間違いではなかったんだろうけど、切ないですよね。
「ここはあたしにとって世界で一番優しい場所で、この人はあたしにとって他の何よりも大切な人だって」
(102ページ 引用)
さて、部長さんから食事会のことについて謝られた博道くん。晴香が演劇部を辞めたことを告げられた博道くんは、晴香に校門でキスをされてしまうんです。辞めて変わり始めた晴香。ただそれは遅く、隣にいるのは「なぜ今なのか」と怒る少年だけ。
両親と新しい家に引っ越した博道くん。そこには2人きりになれず寂しがる好意を寄せている少女が。気持ちを許し、愛情に応える2人の行為。もうこれ不純愛じゃなく、純愛ですよね…。ただ晴香にはこれができなかった。
あたしが可哀そうでいる限り、博道くんはあたしを捨てられないということだ。
(226ページ 引用)
時雨と晴香の誕生日を祝った博道くん。晴香にブレスレットを渡した彼は、誰もいない公園で時雨に指輪を渡してしまいます。それをなんと晴香は見てしまっていたんです! ということでここからはネタバレすぎるのであまり言わないけど、何もかもが遅かった。
2人がただの兄妹ではないことに気づき始めた晴香は「あたしが可哀そうだから、言い出せない」と嘘を隠していることを読み、「博道くんがいなくなったら、死んじゃうかも」と縛って、さらには前まで求められてえっちなことをしようとし、時雨になろうとする。
「絶対に……
逃がさないから」
逃がさないから」
(234ページ 引用)
王子様と結婚し、子供を産んで、幸せな家庭を。そんなシンデレラストーリーはすでに少女にはなく、ただの王子様を求める玩具となって少年を苦しませる。ほんとに1つのことで変わったはずなのに、少女の執着が怖かったですね。
先輩から妹から最後の喝を受け、恋人として話し合った晴香と博道くん。さよなら×ラブストーリー。そう題され終わったはずの物語は最後にと。この報われない純愛という結末は1つの幸せの形として受け入れられるけど、これだれも救われてないよね。
だって、晴香の記憶の有無さえ分かっていないもん……。愛情という猛毒。幸せって何なんでしょうね。何はともあれ、令和のラノベの不純愛ラブコメという流れを作った『いもキス』最終巻。3人の純愛に魅せられました。今回も面白かったです。不純愛から次にどんな世界が生まれるのでしょう。次回作も楽しみですね!
以上、ラノ感でした!
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