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著者 二語十 イラスト うみぼうず

探偵はなぜ、生きている?
大人になった助手たちの前に
世界の危機が訪れる、探偵物語第7巻。

目次1 ▯あらすじ
2 ▯感想

 

あらすじ

探偵と助手の目も眩むような冒険譚はかつて上空一万メートルで始まった。依頼人を助け、事件を解決し、強大な敵と戦う、世界を股にかけた旅。それは探偵の死で終わりを迎えた。――だが一年後、終わった筈の物語は一人の少女の激情で再び動き出す。「大丈夫、君塚とあたしたちの願いは全部叶えるよ」「ああ、仲間を助けに旅に出よう」それから俺たちは、世界の深淵に挑み、幾多の戦いを乗り越え、多くの犠牲を払いながらも――やがて奇跡を起こした。全てが終わった今、俺・君塚君彦は、日常という名の後日談に浸っている。それでいいのかって? いいさ、誰に迷惑をかけるわけでもない。だって、そうだろ? 探偵はもう――

(MF文庫J公式サイトより)

感想


前巻(6巻)のお話

シエスタと出会う前、ダニー・ブライアントという男と生活していたことを夏凪たちに話し出した君塚。シエスタの手帳を見たノーチェスは、過去にシエスタが《連邦政府》からダニーを捕まえてほしいと言われ、日本に来ていたことを知る。

風靡さんに告げられたダニーといる少年K・君塚を探し、事故現場で包丁を持った君塚と出会い、白銀月華と名乗ったシエスタ。君塚の取り調べをし、彼が《巻き込まれ体質》を利用し犯人を庇っていたことに気づいたシエスタは、彼とダニーの捜索を開始。

ダニーが残していた風景画から、彼が出入りしていた児童養護施設『太陽の家』に辿り着く。しかし、そこにも彼の姿はなかった。――が、君塚はダニーが1年前に死んでいたことを知っていた。君塚もまたシエスタを利用し、ダニーの情報を集めようとしていたのだ。

君塚と別れたシエスタは、《情報屋》ブルーノに会いに行き、正義を自称する自警団とダニーが戦っていたことを知る。『太陽の家』で得た、ダニーが残した鍵の情報を頼りに鍵を手に入れた君塚。しかしそんな君塚を、ダニーを殺した自警団の1人、画商クローネが誘拐してしまう。

シエスタと共にクローネを討ち払った君塚。シエスタがミゾエフ連邦の《虚空歴録》をダニーが保持してしまったと気づく中、シエスタにダニーが残したビデオレターを渡された君塚は、元《名探偵》の遺志を受け継いだのだった。


前回の感想はこちらから


試し読みまでのお話

多くの英雄の活躍によって解決した《大厄災》から1年後、《調律者》制度もなくなり、探偵業をし平和ともいえる日常を過ごしていた君塚。しかし、君塚たちのもとに《連邦政府》からの依頼が届き――というのが試し読みまでのお話。

ここからは少しネタバレが含まれるので、読んでない方は注意してください。



未来の危機

さて今回は少し大人になった名探偵たちと仮初めの平和な回でした!


《名探偵》《魔法少女》《巫女》《暗殺者》など、多くの英雄の活躍と犠牲によって解決した《大厄災》から1年後、《調律者》制度もなくなり、20歳の大学生となって、シエスタと夏凪と探偵をしていた君塚!


「我々はこれを《巫女》にも感知できなかった《未知の危機》として問題視しています」
(36ページ 引用)


冬期課題も終わっていない中、君塚たちは《連邦政府》に呼び出され、《連邦政府》高官だけが狙われる殺人事件が起きていて、それが《未知の危機》として問題視されていることを告げられます! 


――まず一言、いったい6巻との間に何があった!?


シエスタ普通に生きてるんだけど⁉ この前まで戦って眠ってたのに。《大厄災》って何⁉ 《巫女》ミアも未来視失ってるし、風靡さんなんて警察だったのに捕まってるし…。分からないことだらけなんですけど!? 他にも言いたいことあるけど、2期おめでとう!


『世界を救った探偵が、これからは平穏で幸せな日常を過ごせますように』
(53ページ 引用)


さて、いろいろ言い終えたところで、《連邦政府》高官のノエルから調査を依頼された3人。《大厄災》収束1年を祝う《聖還の儀》が近づく中、元《名探偵》2人の幸せな日常を願っていた君塚は、《人造人間》を思わせる敵と遭遇するんですよ


元《名探偵》たちと事件を片付け、《名探偵》が帰って来たような気持ちになる君塚。ただそれは仕組まれていたんですよね。元《情報屋》ブルーノに。そして彼から《聖還の儀》に《未踏の聖域》という観測不可能な領域から使者がやってくると告げられるんです。


《SPES》とは違うまた別の《未踏の聖域》という謎の存在。《連邦政府》もまだアイスドールや《虚空歴録》など、謎が多いのに、ね。《名探偵》がまた戦わざるを得ない状況になるかもしれないと。君塚にとったら、助手にとったらと思うと…。この世界には平和はないのか。


「本当にあるなら聞かせてくれ、《未知の危機》を防ぐ術とやらを」
(162ページ 引用)


さてさて、高校生になり可愛さが増した最可愛な斎川や、事件を乗り越え大人びたシャルと再会した君塚。《聖還の儀》に向けて準備を進める中、元《発明家》スティーブンから呼び出された彼は、《未知の危機》を防ぐ方法として、ミアから託された《原典》の譲渡を告げられます。


ということで、今回もここからはネタバレすぎるので言わないけど、戦いから逃げることは許されない、完全な正義と仮初の平和、突如として訪れた平和の中、《名探偵》の平和な日常を願い、輝く《名探偵》の姿に揺れる君塚の第2幕を告げる、新たな脅威と力に魅せられました。


「人類はそろそろ目覚めるべきだとは思わぬか、この仮初めの平和から」
(272ページ 引用)


パンドラの箱を無理やり開け、亡くなったダニー。かつての《名探偵》が知り得て、悪に立つまでになった《情報屋》が、たどり着けなかった《虚空歴録》とは何なのか! 探偵はなぜ、生きている? 奪われた真実をいち早く見たくもあり、怖くもあります。8巻が楽しみですね!


以上、ラノ感でした!